キヤノンのSPADセンサーの論文がイメージセンサー業界のウォルター・コソノキー賞を受賞

キヤノン 2023年6月1日発表


 キヤノンは、「ウォルター・コソノキー賞(Walter Kosonocky Award)」を5月25日に受賞したと、6月1日に発表した。ウォルター・コソノキー賞は、イメージセンサー業界最大規模の学術研究団体IISSが過去2年でイメージセンサーの飛躍的進歩に貢献した論文として、世界中のあらゆる学会や論文誌の中から1件選定する賞であり、イメージセンサー研究に関する国際的な賞である。

 今回ウォルター・コソノキー賞を受賞したのは、半導体デバイス技術分野で最も権威のある国際学会IEDMにおいて2021年に同社が発表した世界初の320万画素SPADセンサーの論文である。
 SPADセンサーは、画素に入ってきた光の粒子(以下、光子)を1つ1つ数える仕組み(フォトンカウンティング)を採用している。また、1つの光子を100万倍程度に増倍し、大きな電気信号を出力する。CMOSセンサーは、溜まった光の量を測定する仕組み(電荷集積)で、集めた光を電気信号として読み出す際に画質の低下を招くノイズも混ざってしまうが、SPADセンサーは光子の個数をデジタル的に数えるため、読み出す際にノイズが入らず、暗い所でもわずかな光を検出し、ノイズの影響を受けずに被写体を鮮明に撮影できる。また、光子が画素に到達した時刻を非常に高い精度で認識できるため、対象物との距離を高速・高精度に測定できる。このような特長を生かして、自動運転や医療用の画像診断機器、科学計測機器などに用いるセンサーとして幅広い活用が見込まれている。

 キヤノンは、SPADセンサーのフルHDを超える高解像度や、わずかな光をとらえられる高感度性能に加え、高速応答の特長を生かして、自社のセキュリティー用ネットワークカメラでの活用などを通じて、社会の変革やさらなる発展に寄与していく。