リコーなど4社 トンネル工事現場にローカル5G活用 バーチャル空間での360度ライブストリーミング
竹中土木/演算工房/日鉄ソリューションズ/リコー/国土交通省 東北地方整備局 2023年3月28日発表
竹中土木、演算工房、日鉄ソリューションズ(NSSOL)、リコーの4社は、国土交通省が目指すデジタルツインの実現に向け、トンネル工事としては初めてローカル5Gとバーチャル空間での360度ライブストリーミングを活用し、遠隔地からリアルタイムで施工状況を自由視点で確認できるシステムを構築した。
福島県下郷町にある国土交通省東北地方整備局発注の「国道121号湯野上2号トンネル工事」にて1月より開始した実証実験にて活用し、このたび国土交通省の実証確認を得たと3月28日に発表した。
■写真左:発注者が郡山国道事務所にてVRヘッドセットを装着し現場状況を確認する様子
■写真中:受注者が下郷町の現場事務所にてVRヘッドセットを装着し現場状況を説明する様子
■写真右:サポート役が横浜市の自宅からテレワークにて施工状況確認を支援する様子
今回の土木工事現場である「湯野上2号トンネル」は、会津縦貫南道路湯野上バイパスの中で最も長い約2.5kmのトンネルである。今回の湯野上バイパス整備は観光期の混雑緩和、落石崩壊や線形不良といった交通支障箇所の整備、南会津地方の住民の救急医療へのアクセス性の向上を目的としている。
トンネル坑内の環境は携帯電波が入らず通信手段が限られているため、内部の状況を詳細に確認するのは現地での目視確認以外には方法がない。また、トンネル工事の施工においては、掘削における支保構造(地山を支えるH型の鋼材・コンクリート・ロックボルト)の仕様を決めるため、地層の変化ポイントごとに地盤の状態を確認する「岩判定」を行う必要がある。岩判定は、発注者や現場監督など関係者全員が「切羽(きりは)」と呼ばれるトンネル工事の掘削現場まで移動し行うため、岩判定のたびに多数の人員の移動負荷や物理的な手間が生じていた。
こうした課題を解決するため、今回4社協働のもと、4K対応360度カメラとVRヘッドセット、広域・大容量・低遅延のローカル5G無線通信システムを活用して、遠隔地からリアルタイムでトンネル工事現場の施工状況を自由視点で確認できるシステムを国内で初めて導入した。
具体的なシステム構成イメージは次の通り。
【システム構成イメージ】
切羽付近に設置された4K対応360度カメラの映像をトンネル内のローカル5G無線を通じて現場の仮設事務所に伝送することにより、その場からリアルタイムで施工状況を自由な視点にて確認することが可能になる。
またインターネットを通じて、遠隔地にいる発注者も同様の確認が可能となる。
リコーが提供する、任意の空間をVR上で再現するソリューション「RICOH Virtual Workplace」を活用し、バーチャル空間上で様々なデータを組み合わせることにより、遠隔地からの施工状況確認を実現した。施工確認として2つの用途でRICOH Virtual Workplaceを活用しており、1つめは360度カメラ「RICOH THETA」と「RICOH Live Streaming API」を活用し、4K映像の360度ライブをバーチャル空間上で再現。現場映像の自由視点、リアルタイム確認を実現した。また、音声の配信も可能なため、岩片をハンマーで叩いた時の打撃音による岩の差異の判別も行うことが可能である。
2つめの用途では、地形やトンネルの3Dモデルを取り込み、資料や属性情報と組合せ、工事進捗や切羽の状況を連続・立体的に確認することを可能とした。複数人が参加した場合、物理的に離れた場所にいる人もアバターとして同じバーチャル空間に入り込み、自然で自由なコミュニケーションを行うことができる。なお、3Dモデルへの各属性情報の付与に関しては、演算工房が提供する「CyberNATM」上で作成された各情報を3Dモデルへ自動的に付与することで施工管理の効率化も図る。
また、トンネル坑道は最終的に約2.5kmの総延長となるため、広域の範囲で電波照射ができるよう、国内で許容されている最大出力の63Wでローカル免許を取得している。