NECと大阪大学社会技術共創研究センター 顔認証技術の倫理的・法的・社会的課題に関する共同研究を開始

 NECと大阪大学社会技術共創研究センター(以下 ELSIセンター)は、顔認証技術の適用が進む中、新たに生じる倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues; 以下ELSI)の抽出と対応策の検討を通じて、顔認証技術の適正な利用に結び付けるための産学共創の共同研究を9月から本格的に開始したと、9月12日に発表した。顔認証技術の社会受容性に関して、ELSI観点での研究は業界初となる。

NECとELSIセンター

 近年、顔認証技術が社会に浸透していくことにともない、法令遵守に留まらず、利用者の多様な倫理観や社会的な受容性に配慮しつつ、技術を社会実装していくことの重要性が高まっている。
 NECは、AIの社会実装や生体情報をはじめとするデータの利活用において、プライバシーへの配慮や人権の尊重を最優先に事業活動を推進するための指針として、2019年に「NECグループ AIと人権に関するポリシー」を策定し、事業を推進している。また、生体認証を活用した共通のIDによって、複数の場所やサービスで一貫した体験を提供する「NEC I:Delight」事業においても、こうした考え方を基に、お客様やパートナーとの共創を進めている。
 大阪大学は、社会変革に貢献する世界屈指のイノベーティブな大学を目指すことを目標とし、2020年に全学組織の1つとしてELSIセンターを設立し、新規科学技術の研究開発プロセスにELSIへの配慮を組み込むための手法を研究するとともに、産学での共創の実践に取り組んでいる。
 本共同研究は、NECのプライバシーを含め人権を尊重した取り組みのもとで顔認証技術を活用した事業を推進してきた知見と、大阪大学ELSIセンターの新規科学技術に係るELSIやガバナンスのあり方などの研究活動における知見を組み合わせ共同で進めるものである。

【共同研究における主要論点】
 本共同研究では、ELSI観点での課題解決を目的に、以下の点について研究を行う。
(1) 顔認証技術は生活および社会活動にとって、どのようなメリット/デメリットをもたらすか。
(2) 生活者はどのように顔認証技術と接すれば、リスクを抑制してベネフィットを得ることができるか。
(3) 顔認証技術を提供する企業は、何に留意し、いかにサービスを社会に提供すべきか。

 本共同研究において、NECが社会に提供している顔認証技術を題材に、社会実装における課題をELSI視点で解決する取り組みを通じて、先端技術が「安全・安心・公平・効率で誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現」に寄与する新たなイノベーションモデルの構築を目指す。