セイコーエプソン 社員4名による投稿論文が日本画像学会『論文賞』を初受賞

 セイコーエプソン(エプソン)は、同社の社員4名による、インクジェットプリンターの「位置ずれに対する濃度ロバスト性向上ハーフトーン技術の開発」投稿論文が、このたび、(一社)日本画像学会の2021年度『論文賞』をエプソンとして初めて受賞し、6月22日に表彰式が行われたと同日発表した。
 (一社)日本画像学会は、1958年(昭和33年)に電子写真学会として発足以来、画像技術の進歩と発展への寄与を目的に活動している学会である。『論文賞』は、表彰の前年(暦年)発行の日本画像学会誌に掲載され、その中で優秀と認められた論文(原則2件まで)の著者に贈られるもので、2021年度はエプソン社員の投稿論文1件が受賞した。

エプソン 日本画像学会『論文賞』を初受賞
受賞者の(左から)林拓馬氏、角谷繁明氏、和哥山拓也氏、宇都宮光平氏

 今回の受賞は、印刷時の画質悪化につながる「コックリング(cockling)むら」という非常にハードルの高い課題に対応するため、独創的な技術を開発し、さらにはそれを論理的にまとめている点が高く評価されたものである。
 コックリングは、インク吸収時の用紙伸縮により凹凸が発生する現象で、吐出ヘッドと用紙間の距離が変化するためにドットの着弾位置ずれが生じ、それが濃度変動(むら)を発生させる。むらは、プリンターの印刷高速化に伴い悪化するため、特に近年、高速化した大判プリンターなどでは致命的な問題となっていた。本論文は、着弾位置ずれが発生しても、濃度変動が生じないドットの配置原理の考案と実現について報告したものである。本技術により、効果的でコスト面での負担がほとんどなく、多様なプリンターに搭載可能なコックリングむら対策が実現できた。

 本論文技術は、2012年以降発売のエプソン製インクジェットプリンターに順次採用され、お客様へ安定した印刷品質を提供し続けている。大判プリンターでの印刷物は、離れて見る機会が多いため、むらが目立ちやすくなる。本技術でそれらのむらを防ぎ、多様な用紙での高速印刷を可能としたことで、お客様の利便性が高まり、新分野への応用可能性を大きく広げることができた。

【受賞者】
▼角谷 繁明氏 セイコーエプソン株式会社 IJS開発戦略部
▼林 拓馬氏 セイコーエプソン株式会社 P要素設計部
▼和哥山 拓也氏 セイコーエプソン株式会社 AI・アルゴリズム開発部
▼宇都宮 光平氏 セイコーエプソン株式会社 P企画設計部