セイコーエプソン 新社長に𠮷田潤吉取締役執行役員を決議 4月1日付けで就任予定

セイコーエプソン 2025年2月21日発表


左から、小川次期会長と𠮷田次期社長

 セイコーエプソン(以下 エプソン)は、2月21日開催の取締役会において、4月1日付けで𠮷田潤吉取締役執行役員が代表取締役社長に、小川恭範代表取締役社長が取締役会長に就任する社長人事を決議した。

■異動等の理由
 エプソンは、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」の実現に向けて、エプソンが将来にわたって追求していくありたい姿「持続可能でこころ豊かな社会を実現する」を目指し、「省・小・精の価値」により、さまざまな社会課題を解決するという視点で、事業を展開してきた。
 「Epson 25 Renewed」の最終年度となる2025年度は、次期長期ビジョン策定という、今後のさらなる飛躍を考える年度でもある。次世代に向けて計画を着実に実行し、かつ成長領域や新領域を開拓できる製品や、それを支える技術開発を、スピードをもって進めることが重要である。
 このため、次期長期ビジョンの策定から、戦略実行までを一貫して行う新たな経営体制を発足させ、企業価値向上に向けた、強固な経営基盤の構築を加速すべく、取締役選考審議会の審議を経て、取締役会にて決議されたものである。

■異動等の内容
(4月1日付け)
▼取締役会長(代表取締役社長)小川恭範
▼代表取締役社長(取締役 執行役員 プリンティングソリューションズ事業本部長)𠮷田潤吉

【𠮷田潤吉(よしだ・じゅんきち)新代表取締役社長の略歴】
▼生年月日=1964年9月27日生
▼出身地=東京都
▼最終学歴=慶応義塾大学 経済学部
《略歴》
▼1988年4月=同社入社
▼2012年4月=同社プリンター事業戦略推進部長
▼2019年4月=同社DX推進本部副本部長 兼 P事業戦略推進部長
▼2020年6月=同社執行役員 DX推進本部副本部長 兼 P事業戦略推進部長
▼2020年10月=同社執行役員 DX推進本部副本部長 兼 プリンティングソリューションズ事業部副事業部長
▼2021年4月=同社執行役員 プリンティングソリューションズ事業本部長
▼2024年6月=同社取締役 執行役員 プリンティングソリューションズ事業本部長(現任)
▼2025年4月=同社代表取締役社長(就任予定)

セイコーエプソンが4月1日に社長交代
小川新会長と𠮷田新社長のコメント


■小川恭範代表取締役社長(新会長)のコメント

 本日の取締役会において、4月1日付けで私が取締役会長に、𠮷田潤吉取締役執行役員が代表取締役社長となることが決議され、新たな体制で2025年度を迎えることとなります。
 2025年度は、エプソンの長期ビジョン「Epson 25 Renewed」の最終年度となります。同時に、今後のさらなる飛躍を考える次期長期ビジョン策定の重要な年になります。次期長期ビジョンは、次の世代を担い実行していく人が中心となって、そのビジョン、戦略を構築し、実行していくことが重要です。戦略策定からリーダーシップを発揮し、策定後の実行まで責任を持ってやっていってほしいという思いから、今回の社長交代を決断しました。

 私はこれまでいつも、社内に向けて「楽しく仕事をしよう」と言い続けてきました。これは、すべての社員が仕事にやりがいを感じ、楽しんでほしいという私の強い思いです。楽しく仕事をするとパフォーマンスが上がり、さまざまなアイディアが浮かびやすく、お互いが素直に協力し合える状態になりやすいと考えています。これはエプソンの経営理念にある「創造と挑戦」や「総合力を発揮」するための大切な条件です。そのために、「自由闊達で風通しの良いコミュニケーション環境」構築に尽力し、「自ら考え、自ら行動する」社員を増やそうと努力してきました。
 2020年に社長を引き継いだ時は、新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた時期で、世界は前例のない危機に直面していました。人の移動に制限がかかり、サプライチェーンは分断され、働き方もオフィスワークから在宅勤務へと変わりました。就任した4月度は、インドでの売上高はゼロ、ワールドワイドで赤字という厳しいスタートでした。各地でロックダウンが行われ、工場も稼働停止が相次ぎましたが、私はさまざまな面で仕事のやり方を変えることができるのではないか、と考えていました。実際、海外工場での新製品立ち上げにおいて、日本から遠隔でオペレーションをするなど、さまざまな工夫を凝らすようになりました。結果として現地の技術力が向上し、社員をはじめ関係者が協力し合って困難を乗り越える姿を非常に心強く感じました。
 2021年3月には、長期ビジョン「Epson 25」を改定し、新たに「Epson 25 Renewed」として、エプソンが将来にわたって追求していくありたい姿を「持続可能でこころ豊かな社会を実現する」としました。
 創業時より培ってきた「省・小・精の技術」をベースに事業領域の目指す姿を再定義し、戦略を進化させると同時に、環境・DX・共創を柱としたイノベーションを推進しました。これにより、各取り組みにメリハリをつけ、収益性の確保と将来の成長を目指す経営へとシフトしました。さらに、「環境ビジョン2050」を改定して非常に高い野心的な数値目標を掲げました。技術によってさまざまな社会課題を解決するという視点で事業を展開し、ESG活動にも大きく力を注いできました。
 2022年9月には「『省・小・精』から生み出す価値で、人と地球を豊かに彩る」というパーパスを制定しました。これは、無駄をそぎ落とし、より小さく、より精緻にすることで環境負荷を減らし、地球環境をより豊かにできるという考え方です。さらには、地球を豊かにしているという実感が人々のこころも豊かにすると信じています。
 このパーパスを胸に、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」の実現に向けて事業活動を進めてまいりましたが、冒頭述べたように、2025年度は、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」の最終年度であり、また次期長期ビジョン策定という、今後のさらなる飛躍を考える重要な年度でもあります。こうした重責を担うことのできる新しいリーダーに舵取りをバトンタッチするよいタイミングだと考えています。

 𠮷田新社長は、米州での新規事業領域立ち上げ、アジア地域での販売網拡大など、海外マーケ ティング・営業キャリアを経て、事業戦略・商品戦略の推進に携わってきました。直近では、エプソンの主力事業であるプリンティングソリューションズ事業を、事業本部長として4年にわたり率いてきました。その代表ともいえる大容量インクタンク搭載インクジェットプリンターは、昨年累計販売台数1億台を突破しました。また昨年、商業産業領域におけるデジタル化を一層加速させるため、米国Fiery社のM&Aなども積極的に進めております。今後、優れた統率力を発揮し、エプソンをさらに飛躍させてくれるものと確信しています。
 今後は、私は取締役会長、そして取締役会議長として、取締役会の実効性をさらに高め、エプソンのコーポレートガバナンスを強化し、対外的、公的、社会的活動を行いながら、時には𠮷田新社長の相談に乗り、エプソンが「人と地球を豊かに彩る会社」となるべく、その役割を果たしてまいります。
これまでの皆さまのご支援、ご指導に心より感謝を申し上げると同時に、引き続きエプソンに対し、ご指導、ご鞭撻を賜りますようよろしくお願いいたします。

■𠮷田潤吉取締役執行役員(新社長)のコメント

 この度、4月1日付けで、代表取締役社長を拝命いたします𠮷田潤吉です。よろしくお願いいたします。
 先にご紹介いただきましたように、私自身は戦略、新事業開発、海外事業を中心にキャリアを積み重ねてきました。これまで技術者出身の歴代社長とはその点がユニークなところかと思っております。特に海外で感じたことはEPSONというブランドの大切さです。私たちが想像している以上にお客様はEPSONブランドに信頼を寄せていただいており、私たちの商品とサービスをお使いいただいております。私たちは、これまで以上に私たちの持つブランドに愛情と誇りを持ち、お客様の信頼にこたえるようにしていきたいと思います。それが持続的な事業成長につながり、企業価値向上につながると考えています。
 また、海外の中でも新興国市場の開拓に長い時間を費やしてきました。経済成長する国と地域でその成長率を上回ってビジネスを拡大していく重要性も認識しております。そのためにはお客様の潜在的なニーズを先取りして私たちの技術で解決手段をご提供することが大切になってきております。当社は省小精の独創の技術をこれまでも磨いて参りましたし、これからも生み出し続けてまいります。その技術をベースにした解決手段をお届けすることが私の使命でもある、と感じております。

 これまでの経営体験の中で、チームで共通の目標を達成する大切さを学びました。これから会社の最終責任者として新しいリーダーシップチームとともに、全社員が心を一つにして共通の目標に向かっていけるようモチベーションを高める環境づくりをしてまいりたいと思います。

 私はクリエイティビティとインテグリティという言葉を大事にしております。やはり問題解決には創造性に富んだアイディアと真摯な姿勢が必要です。私自身がそれを率先垂範していきたいと思います。パートナーの皆さまの共創を通じて協力を頂きながら実現に向けて努力していきたいと思います。Fiery社のM&Aは昨年の大きな前進ですが、現在も多くのスタートアップへの投資も着実に進めており、これからも共創を拡大していきます。
 プリンティングソリューションズ事業本部でのマネジメントを背景に、今後は他の事業分野も含めた全社経営を担うわけですが、エプソンは「省・小・精の技術」をDNAとして、マイクロピエゾを筆頭に独創の技術を具現化する垂直的な「ものづくり力」と、それをお客様にお届けする「グローバルな自社ネットワーク」があります。
 B to C、B to Bといった多様なお客様に価値をお届けし、お客様につながり続けるために、さまざまなパートナーとの共創・オープンイノベーションが不可欠と考えております。
 その強みを事業に落とし込み、実現しているのは、グローバルで7万を超える社員です。社長として、社員1人1人が最大限に能力を発揮できる環境を実現することが非常に重要であると考えています。共通の価値観として創業以来の「誠実努力」と「創造と挑戦」があり、経営理念に明記されている、お客様、地球環境を大切に、パートナーの皆さまの協力のもと、不可欠な存在の会社になることを目指してきました。
 世界中でエプソンブランドがお客様にご愛顧いただいていることを誇りにしています。今年はエプソンブランド誕生50周年に当たります。もう一度その歴史を振り返り、次の50年の発展に向けた準備をしたいと思います。
 そのために、エプソンの企業風土である「自由闊達で風通しの良いコミュニケーション環境」によって、社員がやりがいを持って働き、多くの知恵が結集できる、活力のある会社にしていきたいと考えています。
 2025年度は、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」の最終年度になります。2025年度もエプソンを取り巻く経営環境は厳しいことが見込まれます。不確実な時代だからこそ自分たちの強みに集中し、新たな視点で柔軟かつスピードある経営を行い、小川社長が築き上げてきた企業風土とエプソンの英知を集めるチームワークでさらに組織基盤を強固なものとしていきます。
 インクジェットイノベーションのエコシステムを引き続き拡大するとともに、2035年に向けた次期・長期ビジョンを策定し、新たなエプソンの成長ドライバーを築き上げるべく精進してまいる所存です。
 また、さまざまな経営環境の変化に対応したうえで、エプソンの強みである「省・小・精の技術」をさらに磨き、「環境ビジョン2050」達成に向けて、持続可能な社会の実現を牽引できるような会社になることを目指します。
 今後も、皆さまのご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願いいたします。