OKI 国内唯一の水中音響計測施設を33年ぶりリニューアル 新固定式計測バージとして稼働開始

OKI 2023年10月2日発表


 OKIは、国内唯一の水中音響計測施設を33年ぶりにリニューアルし、10月より、新固定式計測バージ「SEATEC NEO」として稼働を開始したと、10月2日に発表した。
 評価機材を吊り下げる開口部面積を1.5倍に大型化したことなどにより、さまざまな用途・大きさの海中用機器の水中音響計測試験を可能としたほか、屋上に設置したソーラーパネルで発電した電力を施設内で蓄電し、これを使って昼夜を問わず海上の気象データなどを取得・蓄積できるようにした。
 海上試験業務の拡大および効率化に加え、海洋情報を必要とする漁業関係者などへのデータ提供、さらにはブルーエコノミーの推進に貢献する新たな事業創出に活用していく。なお、「SEATEC NEO」は、OKIの特機システム事業部が保有し、OKIコムエコーズが運用する。

新固定式計測バージ「SEATEC NEO」開所式テープカット
新固定式計測バージ「SEATEC NEO」開所式テープカット

 OKIは1990年、静岡県沼津市の内浦湾に水中音響計測用の固定式計測用バージ「SEATEC II」を設置し、運用を開始した。固定式計測用バージは、湾内に固定したバージ内の開口部から評価機材を海に下して評価するもので、実際の機器使用環境に近い海中において、センサーやソーナー、AUV(自律型潜水調査機器)など、さまざまな海中用機器の水中音響計測試験を行うことができる。しかし近年、用途に応じた大型のAUVやセンサーなども出現し、開口部からの吊り下げが難しいため、バージ外で試験を実施することも増えてきた。バージ外での計測試験は天候の影響を受けやすく、荒天時には作業に支障をきたすことがあるほか、濡れた足場での作業となるため、作業者の安全面の課題も生じていた。

 「SEATEC NEO」は、従来の計測バージと占有面積は変えず、計測用開口部や天井クレーンの吊り上げ高をそれぞれ大きくすることで、これまでよりも大型の対象物の計測を室内で行えるようにした。同時に、使用可能電力容量を従来の75kVAから110kVAにアップさせた。今後は、今まで以上にさまざまな用途の機器が同時に使えるようになり、安定した室内環境で水中音響計測を行うことが可能になる。

 また「SEATEC NEO」では、新たな取り組みとして屋上のソーラーパネルで発電した電力を施設内で蓄電して、監視カメラによる周囲監視や気象観測装置によるデータ取得を昼夜を問わず行うことができるようにした。風向・風速・気温・湿度・降雨量、水温、塩分濃度、溶存酸素量、日照などのデータを年間を通じて取得することで、海洋情報を必要とする漁業関係者へのデータ提供など、新たな事業創出に活用していく。

 OKIは、創業150周年となる2031年度をターゲットに、海洋センシングデータを集め、利活用していく「海洋データプラットフォーム」の実現を目指している。「SEATEC NEO」をはじめ、長年培ってきたOKIの水中音響技術を活用し、海洋GX、海洋安全保障の確保、海洋産業の強化など、ブルーエコノミーの推進に貢献していく。