OKI 信越化学のQST基板上でGaNの剥離/接合技術を開発
OKI 2023年9月5日発表
OKIは、信越化学工業株式会社(信越化学)と共同で、信越化学が独自改良したQST基板からOKIのCFB技術を用いてGaN(窒化ガリウム)機能層のみを剥離し、異種材料基板へ接合する技術の開発に成功したと、9月5日に発表した。本技術によりGaNの縦型導電が可能となり、大電流を制御できる縦型GaNパワーデバイスの実現と普及に貢献する。今後両社は、GaNデバイスを製造する顧客とのパートナーリングにより、社会実装可能な縦型GaNパワーデバイスの開発を進める。
GaNデバイスは、電圧1,800ボルト(V)以上の高耐圧が求められるパワーデバイス、Beyond 5G向けの高周波デバイス、および高輝度なマイクロLEDディスプレイなど、高デバイス特性と低消費電力を両立する次世代デバイスとして注目されている。特に縦型GaNパワーデバイスは、電気自動車の走行距離の延長や給電時間の短縮など基本性能を向上するデバイスとして、今後需要が大きく拡大することが期待されている。
しかし、縦型GaNパワーデバイスの社会実装に向けては、大きく2つの課題がある。1つ目は生産性を向上するためのウエハーの大口径化、2つ目は大電流制御を可能にするための縦型導電の実現である。
信越化学のQST基板は、GaNと熱膨張係数が同等であるため、反りやクラックの抑制が可能である。この特性により、8インチ以上のウエハーでも高耐圧な厚膜GaNの結晶成長が可能となり、大口径化の課題を解決する。
一方、OKIのCFB技術は、このQST基板から高デバイス特性を維持した状態でGaN機能層のみを剥離することが可能である。さらに、GaN結晶成長に必要な絶縁性バッファー層を除去し、オーミックコンタクトが可能な金属電極を介してさまざまな基板に接合することができるため、放熱性の高い導電性基板に接合することで、高放熱と縦型導電の両立を実現する。
両社の技術により2つの課題が解決し、縦型GaNパワーデバイスの社会実装への道が大きく拓けた。
今後両社は、GaNデバイスを製造する顧客に、信越化学がQST基板またはエピタキシャル基板を提供し、OKIがパートナーリングやライセンスによってCFB技術を提供することで、縦型GaNパワーデバイスの実現と普及に貢献する。またOKIは、CFB技術によって単一材料の枠を超えた付加価値を半導体デバイスに提供し、キーメッセージ「社会の大丈夫をつくっていく。」の実現につなげていく。